すでに移動体通信では5Gが普及開始となっており、いよいよBeyond 5Gの実用化が課題となっております。その中核技術がテラヘルツによる高速通信となっています。
 テラヘルツ波は、電波の透過性と光の直進性を併せ持つのが大きな特徴です。その帯域幅の広さにより高速通信が可能となっていますが、テラヘルツ波の特徴や、Beyond 5Gに向けて、テラヘルツ波利用の標準化と各デバイスの研究・開発状況を本セミナーで講演していただきます。ぜひこの機会にご参加下さい。

開催日時

2021年4月28日(水)10:00~17:00(聴講者入室:9:45~)

形態

Zoomを用いたWEBセミナー(Zoomウェビナー)
注)本セミナーでは録音・録画、PC画面の撮影、また配布しますセミナーテキストの複製・第三者への提供などの行為一切を固く禁じます。

プログラム

講演時間に質疑応答10分程度を含みます。

10:00~10:40

テラヘルツ通信とそのロードマップ

国立研究開発法人 情報通信研究機構 笠松 章史 氏

 大容量のデータを無線通信により簡単にやり取りしたいという要求の高まりを受けて、従来のマイクロ波やミリ波に続く新たな周波数帯としてテラヘルツ波を用いた無線通信の期待が高まっている。テラヘルツ波に最も期待される特長としては、従来にない広い周波数帯域幅を用いて高速大容量通信が実現できる可能性が挙げられる.いっぽう、テラヘルツ波は伝搬減衰が比較的大きいことに対し、高利得アンテナが小型に実現可能などの特性があり、これら様々な要因を考慮して、従来の無線技術とは異なる観点で実用的な無線システムを開発したり、適切な応用分野を開拓したりしていくことが求められる。
 本講演では、これらテラヘルツ波の特長をまとめ、テラヘルツ無線通信技術の開発動向および今後予想されるロードマップについて紹介する。

 
10:40~11:20

テラヘルツスペクトラムの標準化

国立研究開発法人 情報通信研究機構 小川 博世 氏

 275 GHz以上の周波数帯利用に関して、国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)において主に受動業務(地球探査衛星業務(EESS)、宇宙研究業務(SRS)、電波天文業務(RAS))に関する研究が行われていたが、2015年の世界無線通信会議(WRC-15)において275-450GHzの周波数範囲内で陸上移動業務(LMS)と固定業務(FS)の各アプリケーションに周波数を特定することを検討するWRC-19議題1.15が成立した。2016年から2019年のITU-Rの研究会期において、関連作業部会(WP)による共用両立性検討が行われ、それらの結果によりWRC-19において4つの周波数帯がLMS/FSのアプリケーションに特定された。
 本講演では、WRC-19以前の275 GHz 以上の周波数帯における無線通信規則の概要、WRC-19 議題1.15 の成立経緯とその後のITU-Rにおける取組み状況、WRC-19 での結論、並びに275GHz以上の周波数帯に関する最近のITU-Rにおける取組み動向を紹介する。

11:20~12:15

超高速サブテラヘルツ通信の課題と300ギガヘルツ帯シリコンCMOSワンチップトランシーバー

広島大学 藤島 実 氏

 Beyond 5G/6G無線通信は、5Gよりも高いデータレートと広いカバレッジが期待されている。毎秒100ギガビット以上の高速データレートを実現するためには、サブテラヘルツ帯の一つである300ギガヘルツ帯が有望視されている。300ギガヘルツ帯では、44ギガヘルツの連続した超広帯域を通信に利用することが可能である。
 本講演では、超広帯域を用いた高速無線通信を実現するために必要なハードウェアについて説明する。また、そのハードウェアの要素として、毎秒80ギガビットの伝送が可能なCMOSワンチップトランシーバーを紹介する。

12:15~13:10

昼休み

13:10~14:05

スマホに搭載可能なBeyond 5G/6Gテラヘルツ無線通信用アンテナの開発

岐阜大学 久武 信太郎 氏

 Beyond 5G/6G無線通信での利用が検討されているテラヘルツ波帯には、豊富な電波資源が眠っています。それは広い周波数帯域です。広い周波数帯が使えれば、とても単純な変調方式で大容量通信が可能となります。これをスマホなどの携帯デバイスで利用しようとすれば、広帯域で小さなアンテナが必要となります。
 本講演では、みなさんがお持ちのスマホのフロントカメラレンズ程度の大きさのテラヘルツアンテナについてご紹介します。アンテナは電波を出したり受けたりするデバイスです。我々が開発したテラヘルツ波可視化技術に基づき、この微小アンテナからどのようにテラヘルツ波が放射されるかについてもご紹介します。

14:05~15:00

共鳴トンネルダイオードとシリコンフォトニック構造が拓くテラヘルツ集積基盤技術の進展

大阪大学 冨士田 誠之 氏

 電波と光の境界周波数のおよそ0.1 THzから10 THzのテラヘルツ帯は、エレクトロニクスとフォトニクスの極限領域に位置し、そのデバイス開発は発展途上段階である.一方,テラヘルツ帯の電磁波であるテラヘルツ波は、いわゆるマイクロ波と比較し、広帯域性を有するため,高速無線通信や高分解能センシングなどへの応用が期待されている。しかしながら、現状のテラヘルツ応用システムの多くは、光電変換のためのレーザ光源や伝送路を形成するための導波管など、様々な個別部品で構成されており、今後のテラヘルツ波の利活用に向けて、デバイスシステムの小型集積化が必要である。
 量子薄膜ナノ構造を有する共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunneling Diode: RTD)は、1 THzを超える周波数での基本波発振が可能なテラヘルツシステムの小型集積化に向けて有望な能動デバイスである。RTDはその駆動条件を変えることで、テラヘルツ波の検出器としても動作させることが可能である。一方、マイクロ波領域の集積回路で広く利用されている平面金属線路に関する技術をテラヘルツ帯の集積技術として適用しようとすると金属による損失が大きくなってしまうという課題がある。ここで、誘電体としてのシリコンに着目した周期的微細構造フォトニック結晶を利用した光波的なアプローチによって、金属線路よりも2桁以上低い損失のテラヘルツ伝送路が実現されており、シリコンフォトニック構造は,テラヘルツ帯の集積基盤技術として有望であるといえる。
 本講演では、RTDおよびシリコンフォトニック構造が切り拓くテラヘルツ集積基盤技術の最近の進展に関して、特に、Beyond5G(6G)につながる通信応用に着目して述べる。

15:00~15:10

休憩

15:10~16:05

超伝導体テラヘルツ光源の同期現象を初めて観測 -テラヘルツ量子通信デバイスの創成につながる新発見-

京都大学 掛谷 一弘 氏

 2020年10月、室温超伝導が報告され、話題となりました。このように超伝導現象は発見から110年、銅酸化物高温超伝導体の発見から30年余り経過した今も人々の興味を引き続けています。その理由は電気抵抗がゼロという特異性にあると私は考えており、それは電子の量子同期現象が巨視的に顕れることで実現されています。このような巨視的量子現象によってテラヘルツ電磁波を外部に放射するのが私たちの研究対象である高温超伝導テラヘルツ光源です。
 本セミナーでは、始めの20分間で超伝導研究の現状とテラヘルツ発振の源であるジョセフソン効果について講述します。残りの時間で高温超伝導テラヘルツ光源実証の経緯を述べ、テラヘルツ光源としての特性と将来性について、最近の偏光制御および量子同期の実証成果を共有したいと思います。

16:05~17:00

グラフェンの理論限界を超えるテラヘルツ電磁波の増幅に成功 ―次世代6G&7G超高速無線通信の実現に光明

東北大学 尾辻 泰一 氏

 炭素原子の単原子層材料であるグラフェンは、電子有効質量がゼロなどの特異な物性を有することから、従来の技術では困難な室温で動作するテラヘルツ光源・増幅素子を実現し得る夢の材料として注目されている。我々はこれまで、グラフェンを利得媒質としてテラヘルツレーザ発振が実現できることを理論的に発見し、他に先駆けて実験実証に成功している。しかしながら、得られる増幅利得は極めて低く、レーザ発振動作の実証は液体窒素温度をわずかに上回る摂氏-163度の低温環境でしか得られていなかった。室温で高強度なレーザ発振を実現するためには、電子と光子の直接相互作用に伴う動作限界を超えた巨大増幅利得を獲得する必要があった。
 今回我々は、グラフェンをチャネルとするトランジスタ素子を試作し、グラフェン内電子集団で形成される電荷振動量子:プラズモンを直流電流で励振することにより、グラフェンの電子がテラヘルツ波と直接相互作用して得られる理論限界を4倍も上回る巨大増幅作用を室温下で観測することに成功した。室温動作可能で乾電池駆動による高利得テラヘルツ波増幅素子、高強度テラヘルツレーザ素子の実現に向けて大きな一歩となる成果であり、テラヘルツ波を利用する次世代超高速無線通信:6G、7G実現のブレークスルーとなる成果である。


参加方法 他

参加方法 4月27日(火)昼頃にZOOM招待メールをお送りいたします。
接続テスト 4月27日(火)17:00~17:20
接続確認が終了いたしましたら退出をしていただき、当日9:45になりましたら同様の手順によりご入室ください。
講演資料 4月27日(火)に順次送信しますZOOM招待メール内に、講演資料のダウンロードURLを記述したしますので、ダウンロードをお願いいたします。
注)配布資料は公開可能な範囲となります。また、資料は複製・コピー、第三者への開示・提供を固く禁じます。

受講料・申込方法ほか

受講料 26,400円(税込)* 講演資料代含む
---複数名申込割引---
同一企業から複数名でお申込みいただいた場合、
2人目以降の方の受講料を半額の13,200円(税込)にさせていただきます。
<3人以上の場合> 備考欄に受講される方の「お名前」「ご所属先」「E-mailアドレス」をご記入ください。
申込・支払方法 下部にあります、お申込みフォームよりお申込み下さい。
受付が完了しましたら自動返信メールが届きますので内容をご確認ください。
<お支払いについて>
後日、決済用URLを記載した請求書(クレジット用)をお送りします。お支払いは4月26日(月)までにお願いいたします。

領収書発行 領収書(PDF)が必要な場合は、備考欄にご記入ください。決済後1週間位でメールにて送付いたします。
申込締切 4月26日(月)15:00
お問合せ (株)オプトロニクス社 担当:加納・三島
Tel:(03)3269-3550 E-mail:seminar@optronics.co.jp

※セミナーの参加受付は終了いたしました。