テラヘルツ(THz)帯を使用した技術は、新しいセンシング技術を提供し、セキュリティ、医療・バイオ、情報通信分野での応用が見込まれています。
 今回は昨年に引き続き、様々な応用に対応するため研究の進められるレーザーから受信機までのデバイスを取り上げました。ぜひこの機会にご参加下さい。

開催日時

2022年3月31日(木)10:00~15:55(聴講者入室:9:45~)

形態

Zoomを用いたWEBセミナー(Zoomウェビナー)
注)本セミナーでは録音・録画、PC画面の撮影、また配布しますセミナーテキストの複製・第三者への提供などの行為一切を固く禁じます。

プログラム

講演時間に質疑応答5分程度を含みます。

10:00~10:55

マイクロ固体フォトニクスによる高輝度テラヘルツ波発生と高感度検出

理化学研究所 平等 拓範 氏

電波によるレーダーの高性能化にかかる重要研究として注目され、そのアンテナを原子・分子の双極子とする議論の中、1960年にメイマンがレーザー発振に成功した。狭帯域の電磁波発生技術が電波から突如、光の領域にジャンプした出来事である。以降、長らく電波と光の波長ギャップであった領域こそがテラヘルツ波に相当する。そして狭帯域で高出力な、すなわち高輝度テラヘルツ波発生とその検出は近年まで困難とされていた。故に、この未知の高輝度電磁波はサイエンスのみならず新たな産業のシーズとも期待される。
本講演では、まず、手のひらサイズの狭線幅サブナノ秒マイクロチップレーザーにより可能となった小型の狭線幅テラヘルツ波光源と高感度テラヘルツ波検出法について述べる。テラヘルツ波システムの小型化可搬化は、様々な現場への対応を可能にすると期待される。さらに、特殊な大口径擬似位相整合素子LA-PPMgLNによる量子限界を超える狭帯域でミリジュールに至る高エネルギーテラヘルツ波発生について紹介する。最後に、先端技術開発から基礎研究に有用なX線自由電子レーザー(XFEL)の小型化に、さらには宇宙の成り立ちに迫る高エネルギー物理の新展開に繋がる次世代レーザー加速器を目指した現在の取り組みについて議論する。
以上、新たな方式による狭帯域の高エネルギーテラヘルツ波発生法、及びその高感度検出法は、レーザー加速など基礎科学から安心・安全社会の構築に貢献するだけで無く、さらには思いも寄らなかった新たな応用の発見にも繋がると期待される。

10:55~11:50

室温動作テラヘルツ量子カスケード半導体レーザーの現状と応用

浜松ホトニクス(株) 藤田 和上 氏

分子線エピタキシー法,有機金属気相成長法に代表される半導体超薄膜作製技術を用いて作製される量子カスケードレーザー(Quantum Cascade Laser: QCL) は半導体レーザーの一種である.この半導体レーザーでは,電子と正孔が再結合することにより光を放出する従来型の半導体レーザーとは異なり,半導体量子井戸構造内のサブバンド量子準位間の遷移を用いることで中赤外領域において高出力室温発振が実現され,既に広く実用化されている.中赤外よりも波長の長いテラヘルツ領域では長らく室温での発光は困難であったが,QCLキャビティ内での非線形光学効果に基づいたテラヘルツ非線形QCLの登場により,室温動作が実現された.近年の非線形活性層構造と導波路構造の最適化の結果,現在も大幅な特性向上が進んでいる.現時点で,周波数1 THzを超える領域をカバー可能な唯一の電流注入型テラヘルツ小型半導体光源である.既にこの新しいテラヘルツ小型光源を用いてイメージング実験も実現されており,実用化が大きく近づきつつある.
本講演では,QCLの一般的な動作原理とその特性について紹介した後,テラヘルツ非線形QCLの詳細について説明し,近年の大幅な動作特性の向上のカギとなった結合二重上位準位(Anti-crossed Dual-upper-state: DAU)構造を用いた非線形QCLについて紹介する.次にその超広帯域な動作特性とイメージング応用への適用例を示す.そして,最近の大きなトピックスである周波数1THz以下のサブTHz帯で動作可能な非線形QCLについて解説し,最後に今後の展望を述べる.

11:50~13:00

昼休み

13:00~13:55

誘電体導波路技術が切り拓くテラヘルツシリコンフォトニクス

大阪大学 冨士田 誠之 氏

電波と光の境界周波数のおよそ0.1 THzから10 THzのテラヘルツ帯は,エレクトロニクスとフォトニクスの極限領域に位置し,そのデバイス開発は発展途上段階である.一方,テラヘルツ帯の電磁波であるテラヘルツ波は,いわゆるマイクロ波と比較し,広帯域性を有するため,高速無線通信や高分解能センシングなどへの応用が期待されている.しかしながら,現状のテラヘルツ応用システムの多くは,光電変換のためのレーザ光源や伝送路を形成するための導波管など,様々な個別部品で構成されており,今後のテラヘルツ波の利活用に向けて,デバイスシステムの小型集積化が必要である.
量子薄膜ナノ構造を有する共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunneling Diode: RTD)は,1 THzを超える周波数での基本波発振が可能なテラヘルツシステムの小型集積化に向けて有望な能動デバイスである.RTDはその駆動条件を変えることで,テラヘルツ波の検出器としても動作させることが可能である.一方,マイクロ波領域の集積回路で広く利用されている平面金属線路に関する技術をテラヘルツ帯の集積技術として適用しようとすると金属による損失が極めて大きいという課題がある.ここで,誘電体としてのシリコンに着目した周期的微細構造フォトニック結晶を利用した光波的なアプローチによって,金属線路よりも2桁以上低い損失のテラヘルツ伝送路が実現されており,これらシリコンフォトニック構造をプラットフォームとしてRTDの集積化を行うテラヘルツシリコンフォトニクスは,テラヘルツ帯の集積基盤技術として有望である.
本講演では,テラヘルツシリコンフォトニクスの基礎から,そのセンシングおよび通信応用に関する最近の進展に関して述べる.

13:55~14:50

微小機械駆動メタマテリアル・フォトニック構造と時間変調メタマテリアルへの取り組み

東北大学 金森 義明 氏

メタマテリアルやフォトニック構造を空間配置することにより、屈折率分布を空間変調することができます。これらの構造を動的制御することにより、空間的屈折率分布の制御を時間軸へも拡張した「屈折率分布の時空間制御」を実現可能とします。そのような技術は、光をオンデマンドで自在制御できる革新的デバイスの創出につながります。当研究室では、MEMS (Micro electromechanical systems)技術を用いた微小機械駆動メタマテリアルやフォトニック構造による動的制御デバイスを開発してきました。マイクロマシニング製造技術を用いて作られるため、小型・量産性に優れ、電子回路や半導体と組み合わせて可視光~THz波の高度な制御が可能になります。次世代通信技術「6G」をはじめ、幅広い分野での応用が期待されます。
講演では、当研究室で開発してきた、微小機械駆動メタマテリアル・フォトニック結晶・Si細線導波路デバイスについて説明し、今後期待される時間変調メタマテリアルについて解説いたします。

14:50~15:00

休憩

15:00~15:55

未開拓のテラヘルツ領域を拓く、高感度・広IF帯域ヘテロダイン受信機を開発

(国研)情報通信研究機構 川上 彰 氏

テラヘルツ波とは、ミリ波の一部と遠赤外線を含む凡そ100 GHz~10 THzの周波数領域の電磁波をいう。同時にこの領域は、未だ開発や利用が進んでいない“未開拓周波数領域”とも呼ばれている。将来の高速無線通信、セキュリティ、医療、地球環境計測・電波天文など幅広い応用が期待されているが、現状は技術開発の最中であり、特に1 THzを超える周波数領域では未だ発振・検出という基盤技術の開発が、主たる研究課題となっている。そこで情報通信研究機構(NICT)では新たな周波数資源の開拓を目指し、検出基盤技術の一つであるヘテロダイン受信機を構築するため、2 THz帯超伝導ホットエレクトロンボロメータミキサ(HEBM)の研究開発を進めている。
HEBMは、二つの近接した金属電極を極薄の超伝導薄膜ストリップで接続した構造をしており、1.5 THz以上の周波数領域において、現在最も低雑音のヘテロダイン受信機を報告している。我々はHEBMの更なる低雑音化と、積年の課題であった中間周波数(IF)帯域の拡大を同時に実現するため、磁性材料により超伝導状態の発現箇所を制御する、NICT独自のHEBM素子構造(Ni-HEBM)を提案した。磁性材料としてニッケル(Ni)薄膜をHEBM電極に採用することで、電極直下の超伝導ストリップの超伝導性を抑制できることを確認、電極間のわずか0.1 μm長の領域のみに、超伝導性を残すことに成功した。その結果、Ni-HEBMのIF帯域幅は、従来の約3 GHzから約6.9 GHzに向上。また2 THzにおける損失補正後のミキサ雑音温度として、約570 K(DSB)という世界トップレベルの低雑音特性を達成した。講演では、研究背景から2 THz帯Ni-HEBMの構造と性能評価、そして実応用を目指した2 THz帯導波管型Ni-HEBMの作製・性能評価について報告する。また新たな展開として、中赤外光領域におけるアンテナ・分布定数回路技術、61 THz帯HEBMについても言及する。


参加方法 他

参加方法 3月30日(水)昼頃までにZOOM招待メールをお送りいたします。
接続テスト 3月30日(水)17:00~17:40
接続確認が終了いたしましたら退出をしていただき、当日9:45になりましたら同様の手順によりご入室ください。
講演資料 3月30日(水)昼までに順次送信しますZOOM招待メール内に、講演資料のダウンロードURLを記述したしますので、ダウンロードをお願いいたします。
注)配布資料は公開可能な範囲となります。また、資料は複製・コピー、第三者への開示・提供を固く禁じます。

受講料・申込方法ほか

受講料 26,400円(税込)* 講演資料代含む
---複数名申込割引---
同一企業から複数名でお申込みいただいた場合、
2人目以降の方の受講料を半額の13,200円(税込)にさせていただきます。
申込方法 下部にあります、お申込みフォームよりお申込み下さい。
受付が完了しましたら自動返信メールが届きますので内容をご確認ください。
支払方法 自動返信メールにて決済用URLを記載した請求書(クレジット用)をお送りします。お支払いは前日の3月30日(水)までにお願いいたします。

領収書発行 クレジットカードご決済後、料金お支払い確認メール内に、領収書のURLが記載されていますのでご使用ください。
※領収書の宛名は申込フォームの「会社名・団体名」がそのまま反映されます。
(料金お支払い確認メールの送信元:株式会社オプトロニクス社 seminar@optronics.co.jp)
申込締切 3月29日(火)13時
キャンセル規定 お客様のご都合による受講解約の場合は下記のとおり解約金として申し受けます。
3月29日(火)までは受講料の50%、3月30日(水)以降につきましては受講料の全額
お問合せ (株)オプトロニクス社 担当:加納
Tel:(03)3269-3550 E-mail:seminar@optronics.co.jp


申込受付は終了しました